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事業承継・M&Aコラム

2020.8.29 人材派遣

コロナ禍でどうなる?「技術者派遣」|ものづくりを支える現状と将来性、M&A(会社売却・譲渡)による生き残りも

景気拡大や人手不足を背景に「技術者・エンジニア派遣」業界は成長を続けてきました。しかし、コロナ禍で優勝劣敗が表面化・加速化することも懸念されています。ものづくりを支える技術者派遣(開発・設計)の現状と将来性、さらには今後の成長/再生を通じた生き残りの選択肢として、M&Aの事例や成功のポイントも解説します。

 

(1)ものづくり系(開発・設計)の技術者派遣とは


技術者派遣 製造技術者 設計 開発 エンジニア

業界大手テクノプロ・ホールディングス社のIR資料での試算によると、技術者派遣の市場規模は1兆8,187億円(2018年)とされています。うちITエンジニア(情報処理・通信技術者)派遣が9,460億円と過半を占めています。ものづくり系の製造技術者派遣も3,230億円とITエンジニアに次ぐ市場規模となっており、景気拡大や人手不足を背景とした成長が続いてきました。

ものづくり系の技術者派遣には、CADオペレーターや筐体・樹脂・金型などの設計技術者を派遣する「機械設計技術者派遣」、電気・電子回路設計技術者を派遣する「電気・電子設計技術者派遣」などがあります。

技術者派遣業界の大手にはテクノプロ・ホールディングス<6028>、UTグループ<2146>、メイテック<9744>、アルプス技研<4641>、フォーラムエンジニアリング<7088>、平山ホールディングス<7781>などがあります。自動車、航空宇宙、産業機器、半導体、医療から家電まで幅広い分野で派遣技術者が活用されています。

 

 

(2)大手による寡占化が進行中。生き残りの鍵は?


技術者派遣 大手 寡占化 コロナ

ものづくり系の技術者派遣の大手各社は近年、積極的な事業展開を続けてきました。好調な派遣需要に対応した技術者採用や教育研修を進めるとともに、M&Aによる事業拡大の動きも多く見られています。

テクノプロ・ホールディングスによるテクノブレーン(技術者人材紹介)買収、UTグループによる東芝や日立のグループ会社買収は大手による「顧客と技術者の囲い込み」の動きと言えるでしょう。

また、テクノプロ・ホールディングスによるソフトワークス(車載・FAシステム開発)の買収など、隣接するITエンジニア(情報処理・通信技術者)領域を巻き込んだM&Aも見られます。ものづくりのIT/デジタル化の潮流に合わせた「総合化/ワンストップサービス」の動きと言えそうです。

こうした大手による寡占化の動きは中堅・中小の技術者派遣企業への圧力として徐々に表面化してきています。顧客ニーズを包括的・安定的にサポートできる体制を評価して大手に発注を集約化する動きも見られます。需要の旺盛な先端分野(IoTや半導体、CASEなど)は採用・育成に一定の規模や資金力を要します。

中堅・中小の技術者派遣企業では寡占化の圧力に対する「守り」が問われています。顧客企業の人件費削減手段として、顧客の正社員よりも「安い派遣技術者を必要な期間のみ」提供するビジネスモデルでは限界があります。同一労働同一賃金の流れも逆風になります。大手が簡単には代替できない(=派遣社員を変えられない)ノウハウの蓄積が必要です。

必ずしも最先端領域の技術が必要になる訳ではありません。顧客先の退職社員の技能継承、複数の汎用技術の組み合わせ、顧客業務プロセスの理解と取り込み、などの「簡単には代替できない」存在になる方法はさまざまです。難しい場合も多くありますが顧客の業務に愚直に向き合ってきた姿勢と経験こそが助けとなります。

 

 

(3)コロナ禍で技術者派遣に起きること


beforeコロナ withコロナ afterコロナ コロナ禍

さらに新型コロナウィルス問題による影響は優勝劣敗の流れを急速に表面化・加速化させるものと見られます。コロナ禍による消費需要の減少は「設計・開発人員の縮小」をつながります。

「安い派遣技術者を必要な期間のみ」提供するビジネスモデルは真っ先に整理の対象となります。一方でコロナ禍でも需要が旺盛な先端分野は大手派遣会社や一部のベンチャー企業が技術者ごと囲い込んでいます。

「afterコロナ」での需要回復に備えて、雇用調整助成金なども活用しながら貴重な技術者の維持と業績/資金繰り対応の両立という困難なマネジメントが求められています。需要回復の時期や程度が見通しづらいなかでの寡占化圧力も念頭に置いた「優勝劣敗を勝ち抜く対応策」までもが求められています。

 

 

(4)事業承継・M&Aでできること


事業承継 M&A シナジー効果

コロナ禍と寡占化による優勝劣敗への対応策には「大手が簡単には代替できない(=派遣社員を変えられない)」ノウハウが求められます。これまでの知見や経験を活かして対応策に取り組むことが基本となりますが簡単ではないことも多いでしょう。

さらに開発・設計人員の調整弁として派遣需要が大幅に減少した場合には、会社と雇用の維持も問題になるかもしれません。派遣単価の見直し要請にも備える必要があります。オーナー経営者様が高齢な場合には体力的なご負担も心配されるところです。

事業承継・M&Aは「会社と雇用を守る」ための選択肢となるかもしれません。大手派遣会社側にとっても非常に良い話となる可能性があります。安定的に事業を譲り受けられるのであれば新規取引に係る入札価格競争や技術者確保も必要ありません。大手ならではの安定した経営基盤や幅広い派遣人材領域を活かして取引関係をより深めていくことが期待できることもあります。

長年培ってきた取引先と技術者はやはり会社の大きな財産です。大手による寡占化の圧力は確かに逆風ですが、取引先を争う入札価格競争は双方にとって望ましいものではないのもまた事実です。大手による「顧客と技術者の囲い込み」の動きを追い風として活用することも「会社と雇用を守る」ための一案となります。

そして、もし事業承継・M&Aで大手と「組む」選択をされた場合には「情報の取り扱い」を適切に判断していくことが事業承継・M&A協議を成功に導く鍵となります。技術者派遣業界のM&Aでは特に「取引先や技術者」を買う側面が強く、その情報開示は欠かせません。情報だけが闇雲に先行して拡散することがないよう、専門家とも相談しながら検討を進めていくことをお薦めします。

 

 

(5)さいごに


afterコロナ 事業承継

さて、「コロナ禍でどうなる?『技術者派遣』|ものづくりを支える現状と将来性、M&A(会社売却・譲渡)による生き残りも」と題してお話させて頂きましたが、ご感想はいかがでしたでしょうか?日本のものづくりを支える重要な技術者派遣業界ですが、コロナ禍と大手の寡占化圧力が優勝劣敗を表面化・加速化させています。「会社と雇用を守る」ために大手に対する「守り」を固めるのか、大手と「組む」のか、非常に悩ましいところもあるかと思います。ご質問やご相談などございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

 

 
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コロナで大打撃の「人材派遣」、事業承継・M&Aで生き残りを図るには?
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