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事業承継・M&Aコラム

2020.11.7

ものづくりを支える「日系EMS」|電子機器・電子部品・基板実装の受託製造の業界動向とM&A(会社売却・譲渡)、成功ポイントや留意点も

EMS(電子機器受託製造)として最も有名な企業は台湾の鴻海精密工業(FOXCONN)でしょう。そのためEMSと言えば人件費の安い新興国企業のイメージが強いかもしれません。実は「日系EMS」も近年活況に沸いており、M&A(会社売却・譲渡)も活発です。そこにはどのような背景があるのでしょうか?業界動向を整理するとともに、M&A(会社売却・譲渡)の成功ポイントや留意点も分かりやすく解説します。

(1)日系EMSとは


日系EMSとは

EMS(Electronics Manufacturing Service)は「電子機器/部品の受託製造サービス」です。日本の下請け生産方式を参考に1980年代に米国シリコンバレーで誕生し、台湾などで飛躍的に発展しました。

EMSが大きく発展した背景にパソコンやスマートフォンなどのIT機器に象徴される「製品/部品のデジタル化」があります。従来のアナログ機器とは異なり、IT機器の部品は標準/汎用化されています。こうした標準/汎用部品はモジュール生産/大量生産された後に組立加工されます。この大量生産/低コスト生産の需要を台湾などの大手EMSが担っているのです。

こうした事業構造では製造・組立工程での付加価値の創出が難しくなります。「スマイルカーブ理論」の通り、付加価値はバリューチェーン(開発→設計→調達→製造・組立→販売→サービス)の両端に移動してしまうのです。日本の製造業の凋落の要因もここにあります。

しかし、すべての電子機器/部品の受託製造が海外に流れてしまった訳ではありません。「日系EMS」は海外大手EMSが手掛けづらいニッチ領域でしたたかに存在感を発揮しています。国内最大手のシークス<東証一部7613>は連結売上高2,230億円の規模を誇ります。ユー・エム・シー・エレクトロニクス<東証一部6615>は生産設備の内製化という独自路線でコストダウンを進めています。多くの日系CMSが独自の付加価値を提供していますが、そのキーワードは「国内生産による差別化」と「CASEによる追い風」です。

 

 

(2)国内生産による差別化


国内生産による差別化

日系EMSの活況を支える「国内生産による差別化」とはどのようなものなのでしょうか。海外大手EMSを寄せ付けない強みが本当に国内生産にあるのでしょうか。

鍵となるのは「少量多品種」と「短納期」の2つの対応能力です。海外大手EMSは一般的に途上国での大量生産により大幅なコストダウンを図っています。構造的にこの2つには対応しづらいのです。また高度な「品質保証」への対応能力も差別化になっています。

具体的には「年産1万台に満たない電子機器/部品」がターゲットとなります。そのなかでも品質要求の高い医療機器や産業機器のほか、パチンコ機器などの電子機器の受託が日系EMSに多く見られます。

また、電子部品領域では基板実装(マウンターによるSMT/表面実装)の受託が多く見られます。「微細基板(0402)」・「多層基板」・「鉛フリー(RoHS指令対応)」・「手組立・BGAリポール」等の顧客仕様に合わせた試作や量産を短納期小ロットで受託するほか、不良率を極限まで抑えたシングルPPMの品質管理体制まで、各社特色ある対応能力を発揮しています。

 

 

(3)CASEによる追い風


CASEによる追い風

さらに日系EMSの事業展開を加速させているのが「CASE」です。

近年、自動車業界でも「デジタル化」の流れが加速しています。「CASE」という言葉に象徴される技術革新(Connected/通信接続化、Autonomous/自動化、Shared/共有化、Electric/電動化)は自動運転やカーシェアリングなどの形で私たちの生活を変えつつあります。

こうした技術革新を支える電装電子部品のニーズも飛躍的に増加しています。自動運転の各種センサー、電気自動車(EV)の電子制御ユニット(ECU)などです。これらの電装電子部品には長期間にわたり高い信頼性を発揮することが求められます。そこで日系EMSの高い品質保証能力に白羽の矢が立つ例が見られます。

 

 

(4)事業承継・M&Aでできること


事業承継・M&Aにできること

日系EMS業界において「国内生産による差別化」や「CASEによる追い風」は事業展開の切り札となっています。しかし、CASE以外の多くの電子機器/部品では年々減少する生産数量や発注ロットへの対応に苦慮するケースも多いのが実情です。手をこまねいていては稼働率の減少、そして設備や人員の非稼働損失を招いてしまいます。

そこで近年注目されているのが「事業承継・M&A」です。譲渡後/統合後の青写真をしっかりと描くことができれば、譲渡企業(売り手)・譲受企業(買い手)の双方にメリットをもたらすWin-Winの形を追求できるでしょう。

譲渡企業(売り手)は廃業の痛手を回避することができる可能性があります。社内の貴重な人員や設備を今後とも有効に活用しつつ、取引先に対する供給責任を果たしていくことができるのです。事業や財務の状況に応じた適正な譲渡対価も期待されます。

譲受企業(買い手)においても「国内生産による差別化」という枠組みのなかで、事業承継/M&Aは貴重な事業展開(事業規模の拡大や最適生産の追及)の機会となるでしょう。

また、大手の日系CMSは「国内生産による差別化」という枠組みを超えて、海外での受託生産活動にも力を注いでいます。海外のEMS企業や生産向上の買収もM&Aによる収益力向上のストーリーとして考えられます。

 

 

(5)事業承継・M&Aの成功ポイントと留意点


M&Aの成功ポイントと留意点

日系EMS業界の事業承継・M&Aにおいて重要なのが「譲渡後/統合後の青写真」です。前述の通り、CASE以外の多くの電子機器/部品では年々減少する生産数量や発注ロットへの対応に苦慮するケースも多いのが実情です。現状の生産体制をそのまま踏襲した「1+1=2」の統合では受注減少に引き続き、苦しむこととなります。

「譲渡後/統合後の受注内容に沿って、最適な生産体制(人員/設備)を再編/構築する」ことで収益力を大きく改善することが望まれます。稼働率を高めるために一部の生産工場や生産ラインは休止することも考えられます。事前に綿密な青写真を描いて事業承継/M&Aの協議や検討を尽くしていくことが望ましいでしょう。

 

 

(6)さいごに


さいごに

さて、「ものづくりを支える「日系EMS」|電子機器・電子部品・基板実装の受託製造の業界動向とM&A(会社売却・譲渡)、成功ポイントや留意点も」と題してお話させて頂きましたが、ご感想はいかがでしたでしょうか?日系EMS業界は「国内生産による差別化」や「CASEによる追い風」を背景に安定した業況が続いてきました。しかし、足元ではコロナ禍の影響を受けており、また中長期的な観点からは受注減少への備えとしての統合再編も求められるところです。M&Aの動きも引き続き活発に推移するものと思われます。ご質問やご相談などございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

 

 
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