■事業承継・M&A動向
動物病院の施設数は増加の一途を辿ってきました。飼育動物診療施設数(産業動物除く*1)は2010年の10,350施設から2019年の12,116施設へと約20%も増加しています。ペットの長寿化・高齢化によるペット医療費の増加が背景に挙げられますが、同期間のペット飼育頭数(犬猫合計*2)が21,473頭から18,575頭へと大きく減少していることから、動物病院の施設数が飽和状態となっているとの声も多く聞かれます。
*1 「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/animal/
*2 「全国犬猫飼育実態調査」一般社団法人ペットフード協会
https://petfood.or.jp/data/index.html
また、小規模な動物病院が多いことも特徴であり、いわゆる「1人獣医師の動物病院」が全体の約2/3を占めています。2次診療施設との連携などで高度な専門診療にも対応できるものの、大切なペットの命と最前線で向き合う1次診療の獣医師勤務の過酷さは知られたところです。熱心な先生であればあるほど1次診療における精神的・肉体的なご負担は大きくなります。更に、潤沢な設備・人員を整えて1.5次診療を標ぼうする地域の中核病院との競争が厳しい地域もあります。
中規模の動物病院(獣医師3人程度)の割合が近年増えている背景には、こうした厳しい経営環境や勤務環境への対応があるようです。一定の勤務シフト制を敷くことで獣医師の先生の精神的・肉体的なご負担が軽減されるほか、医療設備を導入・更新していく負担も相対的に軽減できます。
また、同様の背景から中小動物病院を中心に第三者への承継(M&A)が加速化する傾向も見られます。「引退」をお考えになられているご高齢のオーナー獣医師の先生に加えて、「企業動物病院の勤務医への転身」を考える中堅のオーナー獣医師の先生も多いことから、非常に大きな動きとなっております。
■事業承継・M&Aにおけるポイント
このように近年、加速化の傾向が見られる動物病院の事業承継・M&Aですが、厳しい経営環境を反映するように譲渡条件の交渉は年々厳しくなっているところです。貴社の動物病院の持つ価値を譲渡先候補や後継者候補にしっかりと認めてもらうためにはいくつかのポイントがあります。
1.適切な譲渡先(パターン)の見極め
2.日々の誠実/堅実な動物病院運営
動物病院の事業承継・M&Aにおける譲渡先は、動物病院大手グループ/後継者(獣医師個人)に2極化する傾向が見られます。動物病院大手グループは「企業動物病院」となり得る一定の事業基盤(顧客・獣医師・設備)のポテンシャルを求めることが一般的です。特に小規模動物病院であれば対象外となることも散見されます。
そのような場合には後継者となる獣医師を探すこととなります。動物病院の開業には多額の資金が必要である(一般的には、設備資金30百万円+開業後の運転資金と言われます。)ことから、既存の動物病院を引き継ぐことを希望する獣医師は一定数存在しております。しかし、マッチングには苦労することも多く、また譲渡代金を工面するためには金融機関との融資交渉や譲渡スキームの工夫も必要となります。
こうしたことから、自社の動物病院に相応しい譲渡先(パターン)を見極ることは大変重要です。また、支援会社によってはどちらか一方のみを得意としていることもあります。ご相談される際には「どのような譲渡先が相応しいと考えているか?その理由は?紹介できるか?」と納得できるまでお伺いしてみることも大切になります。
また、動物病院は大変狭い世界です。近隣の動物病院の評判は意外と知られており、事業承継・M&Aの成否を左右することもございます。過酷な経営・勤務環境のなかでも誠実に/堅実に運営されてきた動物病院として、事業承継・M&Aという最後の局面で皆様のこれまでのご苦労が報われることは大変嬉しいものです。
狭い業界であるだけに「日々の誠実/堅実な動物病院運営」と「適切な譲渡先/支援会社選び」こそが事業承継・M&Aを成功に導く大きな鍵となります。
事業承継のご相談・お問い合わせ
https://njp-kakehashi.com/contact/
外部リンク|後継者WORKS(後継者を見つける。後継者になる。)
https://kokei-works.com/