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事業承継・M&Aコラム

2020.8.24 事業承継・M&Aの知識

中小企業の「売却価格」|会社の値段の算定方法、相場・目安が分かる!

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中小企業の経営者であれば「もし会社を売却したらいくらで売れるのか?」と一度は考えたことがあると思います。企業価値評価や株式価値評価、株価算定といった言葉を聞かれたことがあるかもしれません。会社の譲渡を考える際にはM&Aの価格相場や金額目安をまずは知りたいところです。

しかし「中小企業の売却価格は分かりにくい」という声も多いのが実情です。実際に会社を譲渡する際には専門家に相談することをおすすめ致しますが、基本的な会社の値段の算定方法を分かりやすく解説します。

 

(1)なぜ中小企業の「売却価格」は分かりにくいのか?


会社の値段を考えるならば大手企業(上場企業)の方が断然分かりやすいでしょう。株式市場で日々取引されている株価も時価総額もインターネットで簡単に検索できます。株価が上下した理由さえもニュースが教えてくれます。

しかし、中小企業(未上場企業)ではそうはいきません。会社売却やM&Aがあっても「いくらで売れたか」という売却価格は非公開となることが多いでしょう。一般に公開されている価格情報が圧倒的に不足しているのです。これでは「同業のあの会社がいくらなら、うちの会社はいくらで売れるだろう」と推し量ることができません。

それでは、顧問税理士に聞いてみようと思うかもしれませんが、はっきりと答えてくれないことも多いのです。顧問税理士の先生であればいくつかの算定式に当てはめて計算することはできます。しかし中小企業のM&Aに強い先生ばかりではありません。実際にいくらで売れるかの相場観を伝えるのには慎重になることがあります。

それならば最後にと「計算方法だけでも教えてくれ」と顧問税理士の先生に尋ねられるオーナー経営者様もおられるかもしれません。しかし適切な計算方法が示せるなら最初から相場観を教えてくれるでしょう。「計算方法もいろいろある」と煙に巻かれてお手上げになるかもしれません。

いったいどうすれば良いのでしょうか。

 

 

(2)相場・目安を知りたいなら「年買法」を覚えよう!


会社の値段にはさまざまな算定方法がありますが、中小企業のM&Aでは「年買法」が実務的にも幅広く利用されています。年買法とは「株式価値=時価純資産+営業権(のれん)」で計算される非常にシンプルな方法です。

「時価純資産」は貸借対照表上の資産・負債を本来の価値に置き換えて再計算された金額です。決算書上の簿価純資産とは異なることがあります。不良・滞留在庫、過去に高値づかみした不動産、隠れた負債があれば純資産の減額修正が必要です。

「営業権(のれん)」の額は利益の1~3年分程度となることが多いかと思います。会社の業種や景気によっても変動するあくまで目安ですが、考え方は非常に分かりやすいものです。会社の業績が安定している場合、あるいは大幅な成長が見込まれる場合には、3年分を超えるかもしれませんし、業容の縮小が見込まれる場合にはゼロとなることもあります。

また、営業権(のれん)を算定する際の利益は正常収益力がベースとなります。例えば過剰/過少な役員報酬は修正されることになります。その他にもオーナー経営者からの不動産賃料を安く抑えて利益を出している等の事情があれば同様に修正が必要です。

 

 

(3)売却価格を算定する3つのアプローチ


もうすこし専門的に会社の売却価格/譲渡価格を算定したい場合には3つのアプローチから取捨選択することになります。中小企業のM&Aで一般的に活用されるものばかりではありませんが、どのような考え方があるかを理解しておくことは重要です。

1つ目は「コスト・アプローチ」と言われるもので「時価純資産法」が代表的です。年買法でご説明したとおり、資産と負債の時価(実際の価値)に置き直して純資産を計算する必要があります。会社売却の「最低価格」を考える際にも使われることが多いようです。

その他に「簿価純資産法」や「清算価値法」もあります。こちらは通常の会社売却で活用される場面は少ないですが、法的整理や私的整理などの企業再生の場面では「清算価値法」も活用されています。

2つ目は「マーケット・アプローチ」と言われるもので「類似会社比準法(マルチプル法)」が代表的です。少し専門的となりますが「EV/EBITDA倍率」がよく利用されています。EBITDA(営業利益+減価償却費)は簡易キャッシュフローとも言われる指標であり、「EV/EBITDA倍率」は会社の現金創出力を重視した算定方法です。

具体的には類似会社(=同業のよく似た上場企業)にて「EV(企業価値)がEBITDAの何倍になっているか」を調査します。その倍率を自社のEBITDAに掛け合わせることでEVを算出できます。なお、株式価値はEVから純有利子負債(有利子負債-現預金)を差し引くこと必要があることには注意が必要です。

すこし複雑な計算にはなりますが、業種や事業内容によって異なる株式市場の評価を直接的に反映できる手法です。

3つ目は「インカム・アプローチ」と言われるもので「DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法」が代表的です。将来のFCF(フリーキャッシュフロー)をWACC(加重平均資本コスト)で割り引いて現在価値を算定する専門的な手法ですが、考え方としてはEV/EBITDA倍率と同様に、会社の現金創出力を重視した算定方法です。具体的な将来計画を策定することから、企業買収に伴うシナジー効果やそのタイミングも考慮して価格を算定することができる手法です。

中小企業のM&Aにおいても3つのアプローチによる計算結果を比較衡量して決定することもありますが、そう多くはありません。売り手と買い手にとって分かりやすく納得感ある手法が求められる中、上記の手法は現実感がなく、少し複雑すぎるのかもしれません。

 

 

(4)結局、会社の売却価格はどう決まるのか?


会社の値段の算定方法をご紹介してきましたが、売却価格は最終的に「交渉」で決まります。具体的には「相対方式(1対1)」か「入札方式」があります。それぞれの実情を見ていきましょう。

中小企業のM&Aで多いのは「相対方式」です。双方の事情を考慮して慎重に交渉を進めていくことができるのが利点です。売却価格は「年買法」が出発点になることも多いのですが、最終的には売り手と買い手の交渉力や力関係が大きく影響します。

もし買い手候補には困らないという人気企業であれば「入札方式」を選ぶことも選択肢となります。買い手候補各社から譲受条件を記載した意向表明書を提出して頂くことで、最も有利な買い手候補を選択することができます。ただし、入札方式の経験に乏しいM&Aアドバイザーもいるため注意が必要です。

なお、いずれの方法においても、基本合意書を締結した後に詳細な資産査定(DD=デューディリジェンス)を行うことが一般的です。また、最終契約では重要事項に虚偽がないことにつき表明保証が求められます。会社の実情をしっかりと開示した上で、正当な評価としての売却価格を「交渉」することも大切です。

 

 

(5)さいごに


さて、「中小企業の「売却価格」|会社の値段の算定方法と相場・目安が分かる!」と題してお話させて頂きましたが、ご感想はいかがでしたでしょうか?身近ではあるものの奥が深いところもあり、具体的な検討は専門家とご相談しながら進めて頂ければと思います。ご質問などございましたら、ぜひお気軽にご連絡をいただければと思います。

 

 
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