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事業承継・M&Aコラム

2020.8.17 人材派遣

コロナで大打撃の「人材派遣」、事業承継・M&Aで生き残りを図るには?

新型コロナウィルス問題による経済・雇用への影響が広がっています。リーマン・ショックを超える経済減速のなか、派遣先の「非正規雇用の受け皿」である人材派遣業でもまた深刻な影響が懸念されています。「資金繰り破綻や連鎖倒産は回避できるか」「派遣業の許可は更新できるか、」などコロナ禍での心配は尽きません。

コロナ禍で最悪の事態も想定されるとき、事業承継・M&Aが希望をつなぐ選択肢となるかもしれません。人材派遣業(労働者派遣業)の経営者の皆様はぜひご覧ください

 

(1)コロナ禍で人材派遣業に起きること


人材派遣 コロナ 派遣切り 雇い止め

2020年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値は年率換算で27.8%減と戦後最大の落ち込みとなりました。リーマン・ショック後の2009年1~3月期が同17.8%減であったことからも経済へのダメージがいかに大きかったかが伺えます。「派遣切り」や「雇い止め」の苦い記憶も残るなか、コロナ禍での影響が懸念されるところです。

厚生労働省の「労働者派遣事業報告書」集計によると、リーマン・ショック前後(2008年度~2009年度)で派遣労働者数は20.7%減(198万人→157万人)、市場規模は19.0%減(7兆7892億円→6兆3055億円)と急減しました。その後の長期低迷を経て2018年度の派遣労働者数は168万人にまで回復しているものの、市場規模は6兆3816億円と横ばいのままです。

派遣先の「非正規雇用の受け皿」となってきた人材派遣業はやはり景気に苦しめられる傾向があります。2012年の派遣法改正では「日雇い派遣」が禁止されたものの、派遣需要が安定化したのかと言われれば疑わしいところでしょう。リーマン・ショック前後では「日雇い派遣」以外の派遣労働者も大きく減少したのです。

さらに「2018年問題」の影響で「派遣社員の無期雇用化」が進んでいることも見逃せません。2013年の労働契約法改正(無期転換ルール)や2015年の派遣法改正(3年ルール)の結果、「無期雇用の派遣労働者数」は30万人(2015年度)から51万人(2018年度)に急増しています。

派遣社員の雇用安定化措置が進んだ分、派遣契約の打ち切りは派遣会社の経営に直結するのです。派遣会社は「コロナ禍での労働者派遣契約の見通し」をより慎重に吟味していく必要があります。

 

 

(2)「withコロナ」と「afterコロナ」を具体的に考える


beforeコロナ withコロナ afterコロナ コロナ禍

「コロナ禍での労働者派遣契約の見通し」を考える際のポイントは派遣先別に具体的に考えることです。最終顧客・商品までを想像しながら派遣先ごとの需要動向を「withコロナ」と「after コロナ」で見極めていきましょう。

例えば、自動車部品製造業(量産品)の派遣先であれば、「withコロナ」の間は人材派遣需要の落ち込みが続くかもしれません。もし仮にその後の「afterコロナ」では回復が見込めるとなれば、問題はその時期となります。回復までの間の資金繰りを持たせなければいけません。雇用調整助成金や「ゼロゼロ融資」と呼ばれる利息も信用保証料も不要な制度融資は既に活用している派遣会社も多いでしょう。

売上が急減するなら固定費の削減も急務です。同一労働同一賃金への対応(派遣先均等・均衡方式/労使協定方式)での人件費増加も重なるかもしれません。当面は事業所数を削減することも考えられます。2015年の労働者派遣法改正により労働者派遣事業は「許可制」に一本化されています。基準資産額(≒純資産額)が基準(2000万円×事業所数)を下回れば、許可の更新ができません。赤字続きで債務消化に陥ることは許されないのです。

派遣先の経営状況が心配ならばしっかりと確認しなければいけません。数千円~数万円程度の費用はかかるものの、帝国データバンクや商工リサーチ等の信用調査情報の確認は大切です。最悪の場合には連鎖倒産の恐れも出てくるのです。

 

 

(3)事業承継・M&Aで実現できること


事業承継 M&A シナジー効果

資金繰りや基準資産額の維持、取引先の信用情報の確認など「with コロナ」の対応は山積みだが1つ1つ進めていくことです。気が滅入るようなリスクシナリオも含めた確認が必要となります。そして、もし不安な点が見つかったら絶対に見過ごすことがないようにしてください。

課題を単独でクリアできるかよく検討することが基本ですが、どうしても難しい場合もあります。そんな時は事業承継・M&Aも視野に入れることで解決策の幅が広がるかもしれません。他社とのシナジー効果(協力効果)が会社を救う例は数多く見られるのです。

例えば、「信用面」では大手の傘下に入ることで得意先は安心して派遣契約を継続してくれるでしょう。「財務面」でも資金繰り(例:融資)や基準試算額(例:出資)の支援が期待できます。「費用面」では事務所などの共通固定費が不要になるかもしれません。これらの効果は予見しやすく確実な効果が期待されるのです。

さらに「売上面」でも恩恵が見込まれます。同業大手の傘下に入れば、双方の稼働を融通しあうことで平準化効果が期待できるでしょう。また得意先の傘下に入れば、グループ内の派遣需要を優先的に受託できるかもしれません。これらも事業承継・M&Aに踏み切ることで期待される効果なのです。

 

 

(4)転ばぬ先の準備を整える


afterコロナ 事業承継

このように事業承継・M&Aは非常に効果的な結果をもたらしてくれることがあります。後継者問題を抱えている派遣会社はもちろん、それ以外の派遣会社にとっても選択肢になり得るでしょう。もし注意点があるとすれば、時間を要する点です。

どんな相手先でも良いのであれば短期決戦も可能ですが、通常は半年~1年を要すると見たほうが良いでしょう。譲渡条件もさることながら、今後の事業存続を託せる会社/シナジー効果が期待される会社を確実に選んでいく必要があります。特に得意先に引き継いでもらう場合には慎重に進める必要があるでしょう。

もし検討途中で資金繰りや許可更新を危惧するような状況が訪れれば、相当なプレッシャーを受けることになります。許可が得られない場合に請負に転換することも考えられますが、偽装請負とならないように慎重な対応が求められます。駆け込みでの検討とならないよう十分に余裕をもって検討しておくことをお薦めしたいと思います。

 

 
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コロナ禍でどうなる?「技術者派遣」|ものづくりを支える現状と課題、M&A(会社売却・譲渡)による生き残りも
https://njp-kakehashi.com/2020/08/29/552/

外部リンク|後継者を見つける。後継者になる。
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